行動コミュニケーション学がチームマネジメントを変える
「何度伝えても、思ったように動いてくれない」
「任せたはずなのに、いつまでも指示を待っている」
「能力のある社員同士なのに、なぜか協力がうまくいかない」
チームを率いる立場の方なら、こうした悩みに心当たりがあるのではないでしょうか。
一人ひとりに力があっても、その力が自然に組織の成果へつながるとは限りません。仕事の目的や言葉の意味、期待する行動が十分に共有されていなければ、互いに努力していても、すれ違いが起こります。
そこで大切になるのが、「自分の当たり前と、相手の当たり前は違う」という視点です。
私がお伝えしてきた行動コミュニケーション学、そして現在のゴールデンルール・メソッド®︎〈GRM®︎〉では、自分と相手の違いを理解し、日々の関わり方に活かすことを大切にしています。
何を重視しているのか。
どんな情報があると動きやすいのか。
どのように伝えれば、互いの考えを確かめられるのか。
こうした問いを持つことで、指示、会議、仕事の任せ方、振り返りが変わっていきます。
例えば、上司が社員に「この仕事、任せたよ」と伝えた場面を考えてみましょう。
上司は「目的に合っていれば、自分で工夫して進めてほしい」と思っているかもしれません。一方、社員は「教わった手順を守って、確実に進めよう」と受け止めているかもしれません。
この違いが共有されていないと、上司には「主体性がない」と見え、社員には「言われたとおりにしたのに、認めてもらえない」と感じられてしまいます。
同じ言葉を使っていても、同じ意味が伝わっているとは限らないのです。
行動コミュニケーション学をマネジメントに活かす第一歩は、こうした受け取り方の違いに気づくことです。
その手がかりとなるのが、4つの思考です。
| 4つの思考 | 仕事を進めるときに確かめたいこと |
|---|---|
| WHAT=勇 | 何をするのか。まず何から始めるのか。 |
| HOW=誠 | どのように進めるのか。手順や判断基準は何か。 |
| WHY=義 | 何のために行うのか。どんな意味や価値があるのか。 |
| STORY=礼 | どんな経緯があるのか。これまでの経験とどうつながるのか。 |
例えば、「金曜日までに、新サービスの提案を一枚にまとめる」という仕事でも、伝える入口を工夫できます。
「まず、案を一つ形にしてみよう」
「必要な項目と判断基準を確認しよう」
「お客様のどんな困りごとを解決したいか、考えてみよう」
「今回の背景と、以前の提案から変わった点を共有するね」
成果と期限を共有しながら、相手が必要としている情報を補っていくのです。
4つの思考は、人を決めつけるためのものではありません。一人の中にも複数の視点があり、経験や状況によって必要な情報は変わります。
「この人には、この伝え方」と判断を終えるのではなく、
「進めるうえで、ほかに確認しておきたいことはありますか?」
と、本人に確かめることが大切です。
伝え方とともに見直したいのが、任せ方です。
社員に考えて動いてほしいと願うなら、本人が判断できる条件を整える必要があります。資料では、任せる前に共有することを、次の4つに整理しています。
- 成果:何を、いつまでに、どの水準で仕上げるか。
- 裁量:自分で決めてよいことと、相談が必要なことは何か。
- 支援:必要な情報、時間、相談先はそろっているか。
- 確認:いつ、何を見て、一緒に振り返るか。
ここが明確になると、社員は「どこまで自分で進めてよいのか」を理解しやすくなります。上司も、確認する場面を決めたうえで、仕事を見守ることができます。
初めて取り組む仕事なら、見本を示し、一緒に進める支援が必要でしょう。経験のある仕事なら、目的と基準を共有し、本人が工夫する余地を広げられます。
相手の経験と仕事の状況に合わせて、支え方を変えていく。その積み重ねが、自律して働く力を育てます。
さらに、チームマネジメントでは、リーダー自身の反応に気づくことも欠かせません。
例えば、報告が遅れたときに、強く叱る。社員が「次はきちんと整理してから報告しよう」と考える。結果として、さらに報告が遅くなる――。
これは、悪循環の一例です。
リーダーは早く状況を知りたい。社員は、きちんとした報告をしたい。双方に思いがあっても、関わり方によっては、望む結果から遠ざかってしまいます。
そこで、
「報告するまでに、どんなことを考えていた?」
「どの段階で相談するか、一緒に決めよう」
と、事実と次の行動を話し合ってみる。
「早めに報告して」という言葉も、「作業が一定時間止まったら相談する」「今日の16時に一度進み具合を確認する」と具体的にすれば、行動につなげやすくなります。相談のタイミングは、仕事の緊急性や内容に合わせて決めます。


リーダーが自分の言葉を一つ変えることが、チームの行動を変えるきっかけになります。
また、異なる意見が出たときこそ、チームの力を育てる機会です。
新しい企画に対して、すぐに試したい人がいる。
手順や負担を確認したい人がいる。
そもそもの目的を問い直す人がいる。
過去の経験や、関係者への影響を気にする人がいる。
それぞれの発言には、企画をよりよくする情報が含まれているかもしれません。
「そう考える理由を、聞かせてもらえますか?」
この一言で、反対に見えた意見の奥にある、心配や願いが見えてくることがあります。
共通の目的に立ち返り、どの意見をどう活かすかを考える。そこで初めて、個人の違いがチームの力になります。
そして、その協力を支えるのが、具体的な感謝です。
「丁寧に確認してくれたので、見落としに気づけました」
「先に動いてくれたおかげで、お客様の反応がわかりました」
「目的を問い直してくれたので、優先順位を整理できました」
何が、どう役立ったのかを伝えると、本人も周囲も、その人の強みを理解しやすくなります。違いを認めることが、日々の仕事の中で形になっていくのです。
私が大切にしている「愛の循環」は、こうした実践とつながっています。
自分の強みを知る。
相手の考えを聴く。
力を発揮できる条件を整える。
貢献を認め、感謝を伝える。
その関わりを続けながら、仕事の手戻りや確認漏れ、相談のしやすさ、本人の負担がどう変わったかを確かめていく。対話と成果の両方を見つめることが、マネジメントには必要です。
まずは、次に仕事を任せる一人から始めてみてください。
「この仕事を進めるために、最初に何を確認しておきたいですか?」
その答えを最後まで聴いてみると、自分がまだ伝えていなかったことや、用意できる支援が見つかるかもしれません。
一人ひとりの違いを、共に働く力へ。
行動コミュニケーション学を通して、互いの強みを活かし、人が育つチームをつくっていきたいと考えています。


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